久しぶりに、ガルバナの花を見つけた。
オレはバザーで買った花も一緒に抱えて
兄さんの墓に向かう。
兄さんに「会う」のも久しぶりだね。
ごめん。放っておくつもりじゃなかったんだけど、
ここのところ目まぐるしくいろいろあって
来れなかったんだ。
それも報告しなくちゃね。
いつもこの時期は人があまりいないのに。
既に兄さんの墓の方に誰かが向かっている。
背が高くて金髪の、どうも男のようだ。
彼は大きな花束を抱えていた。
それを墓の前に備えると、何か祈っている様子だ。
ダウンタウンの連中ならすぐわかる。
しかもごく限られるし。そもそも兄さんは
裏切り者の仲間として見られているのだから、
そんなに来るわけがない。
オレは思わず駆け寄って声をかけていた。
「いったい誰だ?兄さんに何か用?」
振り向いた男は、まるで悪戯を見つけられた
子供の様な、あどけない表情を浮かべた。
「いや・・見つかってしまったか。こっそり
墓参りをするつもりだったが、寄りによって
君に見つかってしまうとは。」
「バッシュじゃないか・・来てくれたの?」
「ああ・・」
バツが悪そうに頭を掻く。すまなそうな、照れくさそうな
顔をする。
「国王の暗殺者」が、こんな表情をするだろうか。
あの時のいつか墓参りを、という言葉は
嘘じゃなかったんだ。約束を守ってくれた。
オレは、やっぱりバッシュを信じていいのかも、
という気持ちが一層強くなった。
「ありがとう、バッシュ。本当に来てくれて。
きっと兄さんも喜んでる」
「いや・・助けることも、何もできず見ていただけなんて、
本当に申し訳ない気持ちだ。いくら謝っても足りないよ。」
「気にすんなよ。むしろ、『あの』将軍バッシュが直々に
来てくれるなんて、兄さん感激するさ。」
オレはそう言って笑った。
兄さんが生きていて、この場にいたら、本当に感動しただろう。
「バッシュ将軍」は尊敬してたし、皆の憧れだったから。
でも、こんな事件が無かったら直接話すどころか、
一生会う事なんてなかっただろうし、皮肉なものを感じる。
「君も墓参りに来たんだろう?一緒に祈ろう。」
「うん」
オレが花を供えて祈り始めると、バッシュはもう一度祈ってくれた。
ねえ、兄さん。
オレ、この人を信じてみるよ。
そして何より、兄さんはやっぱりオレの
大好きな兄さんだったね。今こそ、確信したんだ。
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