そこは、神秘的な場所だった。
ニフルハイム軍に国を追われ、旅に出たノクティス王子一行。旅の途中で車が故障してしまったため、その修理代が必要だった。
噂によれば、ダスカ地方に住み着いたスモークアイと呼ばれるベヒーモスの角は高く売れるらしい。その売値で修理代を賄うため、ノクティスたちはベヒーモスを倒すことに決めた。
一度は戦いを挑んだものの、歯が立たない強さだった。それで、チョコボ牧場の店主から情報を聞き、貴重なアイテムが眠るフォッシオ洞窟にやってきた。
次から次へと現れる敵を倒し、不思議な武器も回収しながら、ノクトたちは洞窟の最新部にたどり着いた。
緑色の泉。そして、その中に立つ光る木。
「なんだろう、ここ?」プロンプトが横から言う。
「これは……」
ノクティスは不意に、その光る木に興味を持ち、何気なく触れた。
すると、稲妻のような光がその木から発せられた。指先に軽いしびれを感じ、ノクティスは思わず顔をしかめる。だが、それも長くは続かなかった。稲妻のような光は数秒瞬いたあと、ノクティスの手のひらの上で飛散し、消えた。
(なんだったんだ、今のは?)
放心状態に陥ったノクティスがぼんやりと考えていると、頭の中で老人のような威厳のある、しかしあたたかみのある声がした。
「王子よ。我の力を貸そう。そなたの命が危なくなった時には、次の呪文を唱えるがいい。『デウス ディ トニトルス ダ ミヒ ヴィム』」
(デウス ディ トニトルス ダ ミヒ ヴィム)
その呪文を頭の中で繰り返しているうち、仲間が畏怖の表情で自分の顔を見ていることに気づいた。
「ノクト、目……。」
プロンプトが驚愕に目を見開いている。
「ん、目がどうかしたか?」ノクトは聞き返した。
「いや、なんでもない、出よう。」イグニスがそう言った。
この時、自分の目が赤くなったことにノクティスは気づかなかった。
そして、一行は再びスモークアイに挑んだ。
「調子乗りすぎるなよ。」
「お前もな。」
グラディオ兄貴に忠告され、そう軽く答えたものの、ノクティスはかなり不安を覚えていた。迫り来るスモークアイの巨体をジャンプしてかわし、ファントムソードを召喚すると、シフトブレイクをお見舞いする。
しかし、いくらシフトブレイクを叩き込んでも巨大なベヒーモスの体力はなかなか削れそうになかった。そのうち、MPが切れたノクティスは、ベヒーモスの腹の下に入り、仲間と連携し、武器で叩きながら回復するのを待つことにした。それがいけなかった。
ベヒーモスの後ろ足がノクティスの胸を蹴り上げたのだ。
「ぐあ!」声を上げ、横に倒れこむ。
「ノクト、大丈夫か!」イグニスが駆け寄ってくる。
(ここで倒れるわけには行かない)
そう思って立ち上がりかけたノクティスはさらに焼け付くような激痛を右脇腹に感じた。ベヒーモスの角が彼の右脇腹をえぐっていた。ダークグレーのTシャツに血の染みが広がっていく。
「く……そ……」
ポーションをポケットから出そうとしたところ、ベヒーモスの前足の爪が、今度は彼の左腿に食い込み、そのままひっつかんで釣り上げられ、石垣に叩きつけられていた。
「ノクト!!」
(俺は死ぬのか……)
目の前に飛び散る自分の血を見ながら、ノクティスは最悪の結末を想像した。そこに容赦なく繰り出されるベヒーモスの鉤爪の攻撃。
その時、あの光る木に触ったあと、頭の中で聞こえた不思議な声に教えられていた呪文が蘇ってきた。
「デウス ディ トニトルス……」
肩に食い込むベヒーモスの爪の痛みと血の味を感じながら、ノクティスは必死の思いで唱えた。
「デウス
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