恋でも愛でもなく(DDF)ラグナ×ライトニング
※FF012 ディシディアディオディシム設定で
ライトニングとラグナさんの会話に、つい萌えてしまったので
書いた妄想です。
苦手な人は見ないでくださいね。
※ぬるめの15禁くらいの内容です。
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旅を続けるという事が
こんなにも苦しい事とは思っていなかった
記憶の無いまま
ただ戦うのが本能という自分を、怖くすらなる
誰の事を思い出せばいいのかもわからなかった
ただの駒になって戦うだけの日々に
嫌気がさしてしまっただけなのだろう
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皆が寝静まった夜半過ぎ
ライトニングは一人だけ寝付けずにいた
ティファもユウナも既に寝息を立て始めており
寝付けないのは自分だけだと、憂鬱にもなる
ライトニングはこの女子二人と、ラグナとヴァンとの
五人行動が続いていた
元々他の連中は別行動だったが
今やこの五人行動が常になっていた
女子が多いのは少し安心な部分もあるけれど
正直言って
今の自分が浮いている感は否めない
皆子供のように純粋で心熱く
神々の戦いに巻き込まれているのに
それに憂う様子も見られない
自分たちがただの駒だと言ったのは
誰だったのだろうか
そんな言葉はむしろ関係ないという様に
ただ戦い、彼らは傷ついている
健気と言えば言葉はいいが
それ以上に何とも言えないやらされている感が
自分の中で拒絶反応を起こす
この世界に来るまでの記憶は、確かにないけれど
以前の自分もきっと
こういう奴だったのだろうと、ライトニングは考えていた
寝る気が失せたので
側にいる連中を起こさぬように忍び足で
ライトニングはそこを離れた
今は交替でラグナが見張りをしているはず……と
彼の方を見たが
たき火が音を立てているだけで
辺りには見当たらない
「……見張りの意味が無いだろうに」
少しだけ苛立ちながら
見張りをするためにたき火に寄った
放り込んだ小枝が焦げていく様を見ていると
先ほどまでの虚無感が、自分を追いつめ始める
苛立ちながら、小枝をくべると
足音を忍ばせる様子など全くないままに
そのままラグナが戻って来た
「?……ライト、何してんだ?」
「…………こっちのセリフだ」
いっつも能天気なこの男が
ライトニングは苦手だった
「見張りがいなかったからな……意味が無いだろう?何処に行っていた?」
「ああ、悪い悪いトイレだよトーイーレー
皆が寝てるすぐ横で用足したら、さすがに悪いかなって思ってさぁ」
「……その辺のモラルは一応あるんだな」
嫌味を言ったのに普通に返されて
しかもあまりにもラグナらしい返事で
ライトニングは苛立った顔でじろりと睨んだ
「そりゃああるさ〜 これが野郎ばっかりだったら
逆に気も使わないけど、レディーが一緒だからさ
あの尻尾の小僧にも最初言われたしなぁ」
「男ばかりでも気にした方が良いとは思うがな
まぁいい……見張りが頼りないからな。薪を足しておいた」
たき火の近くに腰掛け
ライトニングが火に薪をくべていく
「ああ、なんか悪いな……でも、もう寝て貰っていいぞ?
しばらくはトイレには行かないからさ」
「……寝付けないから構わない」
そう不愛想に返してから
ライトニングは再び火を見つめた
パチパチと弾けて焦げる小枝や薪を見つめるライトニングを
ラグナは最初不思議そうに顔を覗き込んでいたが
しばらくすると一緒に火を見つめ
微笑みを湛えながら、沈黙した
「ラグナ……」
「ん〜?」
「お前は、以前いた世界のことを……覚えているか?」
「俺のいた世界か? 覚えてるというか
ちょっとずつ思い出した事もあるぐらいかなぁ」
ラグナがそう言ったので
ライトニングはラグナを見つめ、次の言葉を待った
「そうだな……でも、この指輪の意味だけは……なんか思い出した」
「……?」
そう言って彼は、左手に嵌った飾り気のない指輪を見つめて
それを大事そうに眺めてみせた
ライトニングは言葉でなく、視線で話の続きを促した
「俺のいた世界じゃあさ、結婚とか永遠の愛を誓うとか
そういう相手に指輪を贈って、左の薬指に嵌めるんだよな」
「な!?」
「それが誰だったとかは思い出せないんだけどな
でも、確かに誰かを愛してた様な気はするんだよ
……思い出せないんだけどさ」
少し照れながらラグナは頭を掻き
自分の左手に嵌められた指輪を、右手で優しく撫でてみせた
「結婚していたのか……」
「そりゃどうかわかんねぇけどな。
でも、今となれば分からなくて良かったのかもしれない」
珍しくラグナが吐いた弱音に、ライトニングも目を丸くした
「何故……そう思う?」
「そんなに不思議か? だって一生を誓う相手がいたのにさ
神様に頼まれたからって、離れ離れになって
結局その人を側で守れないんだぜ? それって辛い事だろう?」
「離れ離れ……」
長めの木の枝で、ラグナが焚火の中心を軽く混ぜると
パッと火の粉が舞い上がり
そのまま夜の空気に消えて行った
「あんたにも……いたのか? ライト
思い出したくなるような、そんな大事な人がさ……」
「……いるか、そんなもの」
「わっかんないぞ〜? あんたは美人だ
大事な家族がいたかもしれないし、恋人だっていたはずだぞ?」
妙に明るくラグナにそう言われた事が
ライトニングを悲しい方向に責めた
「……多分、私は……一人で生きようとしていたはずだ」
「……ライト?」
唐突に呟かれたその言葉は
いつもの凜とした彼女らしくない
弱弱しいものだった
「恐らく私は軍人だ……戦い方から判断したに過ぎないが
それでも群れる行動を嫌う節がある……元いた世界でもきっと
そんな指輪を貰えるような女じゃなかったはずだ
それだけは……わかる」
「…………」
ラグナがライトニングを凝視していた
あの猛々しい戦いの女神の様な彼女が
一体どうしたと言うのだろうか?
ラグナはそう思い、我が目を疑った
「なぁ……ライト、殴らないで聞いてくれ」
「なんだ……唐突に」
「俺、あんたのそういう顔、ダメだ……」
「……!? 」
ラグナは心底困ったような顔をして
ライトニングの左横に座ったかと思うと
そっと彼女の手のひらを取った
「ラグナ……?」
「あんたは綺麗だよ、強いしカッコいいし、いつもクールだ。
でも、あんたがそんな弱弱しい顔されたら
こんな俺だって普通に参っちまう……
必要とされたい……って……そう思っちまうんだ」
ライトニングの横に跪くと、ラグナは彼女の左手の甲に
優しく口づけた
「……とんだプレイボーイだな、お前は……」
「ボーイなんて年じゃないはずだけどな」
「……そうだな」
「ひっでぇなぁ……」
口ではそう言っているのに
ライトニングの語る言葉は、決して刺々しい物では無かった
まるでその手に落とされた不意の口づけを
許して受け入れているかのように
「……私は多分、お前みたいな男は初めてなんだろう」
「ほかの男は、初めてじゃない……か?」
「さぁ……わからない」
いつになくはかなげな声で語る彼女を見て
ラグナもさすがに、彼女を見守るしか出来ず
先ほどほんの少し触れるのを許された手の柔らかさに
もう一度手を伸ばそうとした
すると、ライトニングはラグナの手の動きに気づき
ラグナの顔をじっと見つめ返した
「黙ってさえいれば、お前も捨てたもんじゃない……」
「お褒めの言葉と受け取っておくよ」
ライトニングはラグナのことを
不思議な男だと思い、その瞳を見つめていた
整った顔立ちをしているのに、どこか飄々としていて
それでいて童心を忘れずに、周りを巻き込む明るさを持っている
そんな彼が今、自分の手を取って跪いている
瞳をそらしてその手を払いのければいい
いつものように、馬鹿だなと言って、無かったようにすればいいのに
そう思ったというのに……なぜかそれが出来なかったのだ
「もう一度……」
「ん?」
「いや、なんでもない」
そう言って取り消そうとしたはずなのに
まるですべて見透かしたかのように
再びその白い手の甲に、口づけられた
「……」
「俺のせいにしてくれたらいいよ、今日のライトニングさんは
いつもと違って、俺の魔の手にかかっちゃったってだけだ……」
自分がその罪を背負うから__と、ラグナはほんの少し前に出て
ライトニングの髪の一房を取り、そこにも口づけた
吐息が触れ合うような至近距離で
何事も無いで済まされないほどの瞳が、ライトニングを見つめてくる
その視線を逸らせば良かったと、思えないライトニングは
ラグナの息がかかるその部分だけが、火傷を負った様に痛んで
チリチリと肌を刺激されている様に感じていた
「お前の……せい?」
「それで良いのなら、そう思っててくれないか?」
見つめあっているだけの距離が辛くて、ラグナは少し
ほんの数センチだけ、ライトニングの唇に近づいた
彼女の眼が、少しだけ怯えた様に動き
そのままラグナの視線に吸い込まれた
お互いの名前を呼び合う間もなく
ラグナの息が唇にかかる
そして、あと5センチほどの距離まで近づいてから
「俺のせいに……していいか?」
ラグナが確認を取るかのようにそう聞いた
彼が語るその言葉で、唇が触れそうになり、息がかかる
限界に近づいたライトニングの羞恥心が
膝の上に握った手の力を強めた
「……っ!」
震える肩に手を置いて、ラグナが彼女の唇にそっと重ね合わせる
そのまま、ラグナがライトニングの握りしめた手に手を重ねる
口づけが初めてだったのか、それとも彼だったからなのか
わからないままに、ラグナの唇の動きに、自分を委ねるライトニング
「っ……」
子供でも無いが、大人の女の様な色気も無い彼女が
まるで子供の様な彼に、翻弄されていく
口づけは、優しく触れ続けていくようなものばかりだが
慣れない感触と心地よさに、ライトニングはただ目をつぶるばかりだ
「……ライト、イヤなら」
「イヤ……じゃない」
精一杯の彼女の意思表示に、ラグナは思わず顔をほころばせ
優しくそのバラ色の髪を撫で、頬の輪郭に触れる
緊張した面持ちの彼女が、ラグナの重ねた掌の下で
そっとその手のひらを解き、彼の指を握ったのだ
「……ライト?」
「………………」
おとなしく口づけを受け、瞳を瞑るだけなのに
彼女が今この瞬間、彼に自分を委ね、精一杯甘えて見せる様子が
ラグナには愛しくて仕方なかった
14/02/10 23:07更新 / 霜月(bruler)