はからずも・・ (零式 レム×ナイン)
自分が今までこんなにも
自分のことをもてあますと
思ったことがなかった
そう感じたこともなかった
今まで自分が想ってきた青年は
ここしばらくの間で、まったく自分が知らない男になっていっている
そんな気がして
とはいえ、放ってもおけずに
その背中を目で探す日々が続いていた
自分にも忙しい毎日があり
血なまぐさい戦闘の日々の中で
彼を目で探すその習慣も
次第に疎ましいものに変わってきていた
そんな最中
私は戦場である場面に遭遇してしまう
皇国の女性兵士が
輪姦されていたと思われる現場に
女性兵士は自ら命を絶ったのか
詳細は不明だったが
ありえないと思いたかったが
皇国女性兵士に乱暴をはたらいたのは
朱雀側の若い兵2名だった
下半身をあらわにされた女性兵士と
同じくズボンを自らおろしてことに及んだ彼らが
死んで重なるように横たわっていた
同じ女性として
同情を覚えると同時に
自ら命を絶つ彼女の誇りに
敬意を払うと同時に
男というものに対しての
自分の警戒の無さに
ここで奪われるのは命だけではないという
戒めを自分にも持たなければという気持ちが
わいてきていた
同じクラスの同士たちは、すぐ近くにいるようだったが
私は彼女が辱めを受けたことを
報告することは出来ないと
彼女の着衣の乱れをただし
人目に触れないようにと
その建物から出て、魔法で火を放った
その光景を見てから
私の中にざわざわと
今までとは知らない自分が
目を覚ましたような
不気味な感覚が付きまとい始めた
任務から戻り
また任務へと
殺伐とした日が続く中で
彼の背中を探す感覚と
あの日みた光景が
交互に自分の心を
少しずつかき乱し始めていた
「・・・レムさん、どうかされましたか?」
心配そうに声をかけてきたのは
デュースだった
自分のことを気遣ってくれる心優しい彼女だったが
気持ちの中のざわめきや
心の中の不安を
吐き出してしまったとしたら
きっと自分が今まで秘めてきた
病のことすらも
とめどなく口からついて出てしまうだろうと
「・・・なんでもないよ?ありがとう」
と
お決まりの笑顔を振りまいて
その場をそっと離れた
戦地にいる私たちは
今はジャックとデュース
私の三人
ジャックは嬉々として
戦場に血の雨を振りまいて
後ろは振り返らない様子だった
私はむしろ安心していた
もしここでマキナの
「レム、大丈夫か?」
という、いつもどおりのやさしい一言が降ってきたとしたら
きっと心が折れて
壊れてしまいそうだった
「アギトになるなんて 本当にできるの?」
むしろ自嘲気味に自分の口からついて出た
言葉は
刀を振り回す彼や
笛の音にかき消されて
戦場に消えていった
魔導院に戻っていつものベンチで一人
疲れたからだをただ休めていると
「何やってんだ ? ごるぁ?」
乱暴な口調の彼が私の目の前に立った
ナインだ
いつもならびっくりしてしまうだろうが
疲労からなのか自分の心境からくるものなのか
少し間を置いて
彼の目を見つめ返していた
「・・・・ナイン」
そう名を呼ぶと
「!?・・・・お!!おぉ・・・・」
と
おそらく名前を呼ばれると思わなかったのか
かなり頓狂な返事が帰ってきた
自分がこのときなぜ彼の名を口に出して呼んだのか
そこはわからない
もっとわからないのは
なぜいつものように
彼に対しても
笑顔を振りまいて
「大丈夫!ちょっと疲れただけ!」と
かわすことをしなかったのかということ
名を呼ばれたナインは
驚いた様子で私を見つめている
私は、力の無い表情をしていたと思うが
ぼんやりと彼の目を見つめ返していた
「・・・お前、どっか痛むのか?」
「・・・・ううぅん」
「何だよ、元気ねぇじゃねぇか!!
あ、あれか!!マキナの奴が最近見ねぇもんだから
しょげてんのか!!?」
彼は自分のペースを取り戻そうとしているのか
無理に力のこもった声で空を見上げながらそう言った
「・・・・どうだっけな そんな
マキナか 見ないし 知らない」
「何だ、すねてんのか?
覚えてるってことは生きてんだろ?」
「・・・・・そうなのかもね・・・でも・・・」
「・・・・あんだよ・・・」
「別にいいわ」
ふてくされたというよりは
関心を寄せられない
そうだった
実際に今私は
マキナのことは目の前のナインが言うまで
頭の中になかった
そして私は
なぜかいつも勝気な彼が
私の言動に表情を動かすことが
嬉しく感じていたのだ
「ナイン・・・・・・」
急に呼ばれて驚いたのと
きっといつもどおりに頬を赤らめて否定するかと思いきや
自分の名を呼んでくることに対応しきれず
「あぁ!?」
と
少し調子はずれな声で返事をしてしまった
「ナインは夜はどうやって過ごしているの?」
私はその夜ナインの部屋を訪れていた
彼は鳩が豆鉄砲とはこういう表情だといわんばかりに
期待通りの狼狽ぶりをみせてくれた
対応しきれていないのだろう
これがジャックだったら 無理
これがエースだったら 少し罪悪感
これがエイトだったら ケイトじゃないと無理って言われそう
これがキングだったら 私がかわいそう
これがトレイだったら 面倒
廊下を歩きながら考えていたのは
意外にもこんなことだった
ナインは自分がぼんやりと立っているのをみて
「なんかわかんねぇけど 話聞いてやりゃいいのか?」
意外なくらい紳士な対応で部屋に入れてくれた
以前、違うクラスの男子に言い寄られたことはある
ただ、きっとそういうのはいやだった
「・・・・で、なんだよ?」
と、間が持たなくてナインは口火を切った
「・・・・別に 邪魔かな・・?」
部屋に入れてくれた彼に対して
半ば挑発のような言葉を返す
「・・・そんなこと言ってねぇだろ!!?」
・・・こんなにも彼はいい人だったのだ
追い返すこともせず
私がきっと困っていると思って
部屋に入れてくれて
でも、私はそれをわかっていたとおもう
いや
思うだなんて言うのは
うそだ
きっとわかっていて
彼の部屋にきたのだ
同じクラスの女子たちは
ドクターの元で育てられているからか
どこか異質に感じられていた
疎外感を感じていなかったわけでもない
ナインは部屋のベッドに腰掛けて胡坐を組んで私を見据えている
困った表情がみてわかるぐらい
そう
私は確実にそれを楽しんでいる
なぜかなんてわからない
やさしくて可愛いレムちゃんなんて
誰かが勝手に言ったんじゃないのだろうか
こんなにも今の私は
ひどいのに
「おい・・・顔色わりぃぞ? マザー呼んでやっか?」
「・・・・・いいの そんなんじゃないの そうじゃなくて・・」
私は反射的に彼の近くに寄って
ひざをついて彼の近くの床に座った
ベッドに頭をもたげ
軽く目を閉じてうつむいた
人の匂い
ベッドの近くにいるナインの体温
「・・お、おい 熱でもあんのか?」
子供のように心配して、少ししてから
ナインがびくびくと私の額に手を当ててくれた
熱い手・・・・
心でそう感じた
でも、口に出すのが面倒なくらいけだるい
けだるいのに
嫌なざわめきが少しずつ自分の体の皮膚の内側に
つめを立てるように引っかいてくる
私はゆっくりと自分の手を
ナインの手に重ねようとした
びく!!と一瞬はじかれたような動きをしたが
私が手を重ねると
怖いくらい静かに黙ってしまった
どれくらいそうしていたか
5分・・10分・・
動かない彼にさすがに申し訳なくて
ありがとうと言って去ろうとしたとき
彼と目が合った
「・・・・お前さ
マキナがいねぇからって 俺んとこ来たのか?」
今まで見たことがないくらい真剣な顔をして
彼がまっすぐに私をみた
「・・・・・」
まさか彼がそんなコトを口にするなんて思いもしなくて
咄嗟に言葉が出なかった
「・・・・やっぱしな」
返答をしなかったからか
彼は私に自分の手の平をつかんで
そっとその手をどけようとした
「違うわ」
私ははっきりそういっていた
気づいたら言っていたような気がする
ただ、彼に手を払われるのが怖かった
そんな気がした
私は自分の手で彼の手を握り返し
彼の目を見ていた
そのとき私が彼の目をみて嬉しかったのは
彼は私を疑っているような目で見ていなかったこと
ただ今ここにいる私を
見てくれているような目で見てくれていること
それだけで十分だった
「・・・・ちっせぇ顔だな・・」
と、彼がぼんやり言ったので
少し心がほどけて
私は彼の胡坐をかいた膝へ
そっと頭を置いた
膝の体温がゆっくり私を温めてくれる
そうだ
マキナは私に触れようとしてくれなかったな
きっと私の体を気遣ってとは思うけど
私はそんな風に
壊れ物みたいに扱って欲しかったわけじゃない
こんなときにマキナのことを考えて
少し笑えてしまった
ナインが預けてくれるこのほんの少しの体温で
私の心がほぐれてしまっているのに
「・・・・何にやついてんだ こら・・」
ふてくされたように彼は言うが
口調は今まで聞いたことがないくらいやさしく聞こえた
「ううん・・・ナインって優しいなって思って」
思わずそう答えた
それはうそじゃない
「何言ってんだぁ?お前・・・」
ほんの少しだけど 彼の顔が近づいた
その瞬間
自分が意識したのがわかる
そう思ったら、自然に自分から彼の頬に口付けていた
さすがに驚いた様子もあったが
私の目を見てから
しばらくして 今度は彼の方からキスしてきた
その瞬間
私は
「顔の傷がもったいないくらい
綺麗な顔してるんだなぁ・・・・」
って こんなことをぼんやり思っていた
ナインは思いのほか優しい
頬に添えられた指の動きはぎこちないし
唇の扱い方はちょっと乱暴なんじゃないのかと
思うこともあったけど
服の隙間からゆっくり手を入れてきたときに
「痛くねぇか?」って聞いてきたときは
思わず笑ってしまった
こんなにカッコいい子なのに
初めてだったりするんだろうか
ドクターの子供たちはストイックすぎて
異性だなんて感じなかった
ぎこちない愛撫を受けながら
自分が罪悪感を抱いていることに気がつく
「・・・・いやなら言えよ?」
私は下着姿になっただけな状態で
ベッドに押し倒される形になった
「・・・・私に さわって」
そんな風に煽るのは卑怯かもしれなかったけど
ちょっとの間だけ
何にも考えたくなかったのかもしれない
自分のことをもてあますと
思ったことがなかった
そう感じたこともなかった
今まで自分が想ってきた青年は
ここしばらくの間で、まったく自分が知らない男になっていっている
そんな気がして
とはいえ、放ってもおけずに
その背中を目で探す日々が続いていた
自分にも忙しい毎日があり
血なまぐさい戦闘の日々の中で
彼を目で探すその習慣も
次第に疎ましいものに変わってきていた
そんな最中
私は戦場である場面に遭遇してしまう
皇国の女性兵士が
輪姦されていたと思われる現場に
女性兵士は自ら命を絶ったのか
詳細は不明だったが
ありえないと思いたかったが
皇国女性兵士に乱暴をはたらいたのは
朱雀側の若い兵2名だった
下半身をあらわにされた女性兵士と
同じくズボンを自らおろしてことに及んだ彼らが
死んで重なるように横たわっていた
同じ女性として
同情を覚えると同時に
自ら命を絶つ彼女の誇りに
敬意を払うと同時に
男というものに対しての
自分の警戒の無さに
ここで奪われるのは命だけではないという
戒めを自分にも持たなければという気持ちが
わいてきていた
同じクラスの同士たちは、すぐ近くにいるようだったが
私は彼女が辱めを受けたことを
報告することは出来ないと
彼女の着衣の乱れをただし
人目に触れないようにと
その建物から出て、魔法で火を放った
その光景を見てから
私の中にざわざわと
今までとは知らない自分が
目を覚ましたような
不気味な感覚が付きまとい始めた
任務から戻り
また任務へと
殺伐とした日が続く中で
彼の背中を探す感覚と
あの日みた光景が
交互に自分の心を
少しずつかき乱し始めていた
「・・・レムさん、どうかされましたか?」
心配そうに声をかけてきたのは
デュースだった
自分のことを気遣ってくれる心優しい彼女だったが
気持ちの中のざわめきや
心の中の不安を
吐き出してしまったとしたら
きっと自分が今まで秘めてきた
病のことすらも
とめどなく口からついて出てしまうだろうと
「・・・なんでもないよ?ありがとう」
と
お決まりの笑顔を振りまいて
その場をそっと離れた
戦地にいる私たちは
今はジャックとデュース
私の三人
ジャックは嬉々として
戦場に血の雨を振りまいて
後ろは振り返らない様子だった
私はむしろ安心していた
もしここでマキナの
「レム、大丈夫か?」
という、いつもどおりのやさしい一言が降ってきたとしたら
きっと心が折れて
壊れてしまいそうだった
「アギトになるなんて 本当にできるの?」
むしろ自嘲気味に自分の口からついて出た
言葉は
刀を振り回す彼や
笛の音にかき消されて
戦場に消えていった
魔導院に戻っていつものベンチで一人
疲れたからだをただ休めていると
「何やってんだ ? ごるぁ?」
乱暴な口調の彼が私の目の前に立った
ナインだ
いつもならびっくりしてしまうだろうが
疲労からなのか自分の心境からくるものなのか
少し間を置いて
彼の目を見つめ返していた
「・・・・ナイン」
そう名を呼ぶと
「!?・・・・お!!おぉ・・・・」
と
おそらく名前を呼ばれると思わなかったのか
かなり頓狂な返事が帰ってきた
自分がこのときなぜ彼の名を口に出して呼んだのか
そこはわからない
もっとわからないのは
なぜいつものように
彼に対しても
笑顔を振りまいて
「大丈夫!ちょっと疲れただけ!」と
かわすことをしなかったのかということ
名を呼ばれたナインは
驚いた様子で私を見つめている
私は、力の無い表情をしていたと思うが
ぼんやりと彼の目を見つめ返していた
「・・・お前、どっか痛むのか?」
「・・・・ううぅん」
「何だよ、元気ねぇじゃねぇか!!
あ、あれか!!マキナの奴が最近見ねぇもんだから
しょげてんのか!!?」
彼は自分のペースを取り戻そうとしているのか
無理に力のこもった声で空を見上げながらそう言った
「・・・・どうだっけな そんな
マキナか 見ないし 知らない」
「何だ、すねてんのか?
覚えてるってことは生きてんだろ?」
「・・・・・そうなのかもね・・・でも・・・」
「・・・・あんだよ・・・」
「別にいいわ」
ふてくされたというよりは
関心を寄せられない
そうだった
実際に今私は
マキナのことは目の前のナインが言うまで
頭の中になかった
そして私は
なぜかいつも勝気な彼が
私の言動に表情を動かすことが
嬉しく感じていたのだ
「ナイン・・・・・・」
急に呼ばれて驚いたのと
きっといつもどおりに頬を赤らめて否定するかと思いきや
自分の名を呼んでくることに対応しきれず
「あぁ!?」
と
少し調子はずれな声で返事をしてしまった
「ナインは夜はどうやって過ごしているの?」
私はその夜ナインの部屋を訪れていた
彼は鳩が豆鉄砲とはこういう表情だといわんばかりに
期待通りの狼狽ぶりをみせてくれた
対応しきれていないのだろう
これがジャックだったら 無理
これがエースだったら 少し罪悪感
これがエイトだったら ケイトじゃないと無理って言われそう
これがキングだったら 私がかわいそう
これがトレイだったら 面倒
廊下を歩きながら考えていたのは
意外にもこんなことだった
ナインは自分がぼんやりと立っているのをみて
「なんかわかんねぇけど 話聞いてやりゃいいのか?」
意外なくらい紳士な対応で部屋に入れてくれた
以前、違うクラスの男子に言い寄られたことはある
ただ、きっとそういうのはいやだった
「・・・・で、なんだよ?」
と、間が持たなくてナインは口火を切った
「・・・・別に 邪魔かな・・?」
部屋に入れてくれた彼に対して
半ば挑発のような言葉を返す
「・・・そんなこと言ってねぇだろ!!?」
・・・こんなにも彼はいい人だったのだ
追い返すこともせず
私がきっと困っていると思って
部屋に入れてくれて
でも、私はそれをわかっていたとおもう
いや
思うだなんて言うのは
うそだ
きっとわかっていて
彼の部屋にきたのだ
同じクラスの女子たちは
ドクターの元で育てられているからか
どこか異質に感じられていた
疎外感を感じていなかったわけでもない
ナインは部屋のベッドに腰掛けて胡坐を組んで私を見据えている
困った表情がみてわかるぐらい
そう
私は確実にそれを楽しんでいる
なぜかなんてわからない
やさしくて可愛いレムちゃんなんて
誰かが勝手に言ったんじゃないのだろうか
こんなにも今の私は
ひどいのに
「おい・・・顔色わりぃぞ? マザー呼んでやっか?」
「・・・・・いいの そんなんじゃないの そうじゃなくて・・」
私は反射的に彼の近くに寄って
ひざをついて彼の近くの床に座った
ベッドに頭をもたげ
軽く目を閉じてうつむいた
人の匂い
ベッドの近くにいるナインの体温
「・・お、おい 熱でもあんのか?」
子供のように心配して、少ししてから
ナインがびくびくと私の額に手を当ててくれた
熱い手・・・・
心でそう感じた
でも、口に出すのが面倒なくらいけだるい
けだるいのに
嫌なざわめきが少しずつ自分の体の皮膚の内側に
つめを立てるように引っかいてくる
私はゆっくりと自分の手を
ナインの手に重ねようとした
びく!!と一瞬はじかれたような動きをしたが
私が手を重ねると
怖いくらい静かに黙ってしまった
どれくらいそうしていたか
5分・・10分・・
動かない彼にさすがに申し訳なくて
ありがとうと言って去ろうとしたとき
彼と目が合った
「・・・・お前さ
マキナがいねぇからって 俺んとこ来たのか?」
今まで見たことがないくらい真剣な顔をして
彼がまっすぐに私をみた
「・・・・・」
まさか彼がそんなコトを口にするなんて思いもしなくて
咄嗟に言葉が出なかった
「・・・・やっぱしな」
返答をしなかったからか
彼は私に自分の手の平をつかんで
そっとその手をどけようとした
「違うわ」
私ははっきりそういっていた
気づいたら言っていたような気がする
ただ、彼に手を払われるのが怖かった
そんな気がした
私は自分の手で彼の手を握り返し
彼の目を見ていた
そのとき私が彼の目をみて嬉しかったのは
彼は私を疑っているような目で見ていなかったこと
ただ今ここにいる私を
見てくれているような目で見てくれていること
それだけで十分だった
「・・・・ちっせぇ顔だな・・」
と、彼がぼんやり言ったので
少し心がほどけて
私は彼の胡坐をかいた膝へ
そっと頭を置いた
膝の体温がゆっくり私を温めてくれる
そうだ
マキナは私に触れようとしてくれなかったな
きっと私の体を気遣ってとは思うけど
私はそんな風に
壊れ物みたいに扱って欲しかったわけじゃない
こんなときにマキナのことを考えて
少し笑えてしまった
ナインが預けてくれるこのほんの少しの体温で
私の心がほぐれてしまっているのに
「・・・・何にやついてんだ こら・・」
ふてくされたように彼は言うが
口調は今まで聞いたことがないくらいやさしく聞こえた
「ううん・・・ナインって優しいなって思って」
思わずそう答えた
それはうそじゃない
「何言ってんだぁ?お前・・・」
ほんの少しだけど 彼の顔が近づいた
その瞬間
自分が意識したのがわかる
そう思ったら、自然に自分から彼の頬に口付けていた
さすがに驚いた様子もあったが
私の目を見てから
しばらくして 今度は彼の方からキスしてきた
その瞬間
私は
「顔の傷がもったいないくらい
綺麗な顔してるんだなぁ・・・・」
って こんなことをぼんやり思っていた
ナインは思いのほか優しい
頬に添えられた指の動きはぎこちないし
唇の扱い方はちょっと乱暴なんじゃないのかと
思うこともあったけど
服の隙間からゆっくり手を入れてきたときに
「痛くねぇか?」って聞いてきたときは
思わず笑ってしまった
こんなにカッコいい子なのに
初めてだったりするんだろうか
ドクターの子供たちはストイックすぎて
異性だなんて感じなかった
ぎこちない愛撫を受けながら
自分が罪悪感を抱いていることに気がつく
「・・・・いやなら言えよ?」
私は下着姿になっただけな状態で
ベッドに押し倒される形になった
「・・・・私に さわって」
そんな風に煽るのは卑怯かもしれなかったけど
ちょっとの間だけ
何にも考えたくなかったのかもしれない
13/07/06 18:38更新 / 霜月(bruler)