連載小説
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The Fateful Encounter
薄い群青色をした空が段々と白みを帯びる。
朝日がゆっくりと昇り、一日の始まりを告げる
このなんとも言えない瞬間を目に強く強く焼き付けた。
それは誰にでも訪れる当たり前の時間のようであり、
けれど俺にとっては己の存在を再確認する瞬間でもある。

セフィロス。神羅カンパニーに属するソルジャー1st。
俺の事を英雄だと周りは言う。
無論、誰よりもソルジャーとしても仕事をこなし、
他の人間よりも身体能力が優れている事は承知しているが……
それでも時間の流れ、移り変わる景色の中では所詮一風景でしかないのだ。

「今日も早いな、セフィロス」
背中から聞こえる低い声に振り向くと、
そこには腕を組みこちらを目を細めるアンジールがいた。
「ただの日課だ」
「日課?いくら日課といえど、普通の人間は昨晩の仕事が3時間前に終わった夜明けくらいはギリギリまで寝るものだろう」
「そうか?」
「そんなもんだ」

そうは言った所で俺が変わらないことなどお見通しなんだろうが、
それでも遠回しにこの身の心配をしてくれているのだろう。
助言を聞く聞かないはさておき数少ない友人の心遣いは嬉しい、と思う。
埃っぽい風が二人の間を吹き荒んだ。
神羅カンパニーの屋上の縁から踵を返すと、俺は軽くアンジールの肩を叩く。
「さ、行こうか」
「そうだな、今日も面倒事が盛りだくさんだ」

早足でカツカツと階段を降りると、そこにラザードの姿があった。
「ちょうど良かったセフィロス」
メガネの奥で、全てを計算的に見透かすような瞳が揺れる。
「昨日の続きを頼むぞ」
今日の任務も昨日に引き続きモデオヘイムへ向かえとの合図だ。
反神羅の連中が面倒な兵器をこっそりと作っているとの情報をリークしたタークス。平たく言えばそれを排除してこいという俺の出る幕ではない小さな命令だが、昨晩の調査でその兵器がどうやら本気で面倒くさい事になっている事が判明したらしい。
そこで俺に声がかかったと言う訳だ。
あんな廃村にまでご丁寧に目を光らせている神羅にも驚くが
俺にとってはただ一つ、命令があるならばそれに従うだけだ。

そのままアンジールと廊下を抜け、外へと繋がる階段を下りると眼下に人影が目に入った。黄色い声援が耳をつんざく。
「軽く手ぐらい振ったらどうだ?セフィロス」
「アンジール、お前こそ」
そこにいたのは自分たちの活躍を熱狂的に応援してくれる女達の姿。
応援は結構な事だが、ソルジャーはあくまでも神羅カンパニーに雇われている存在であり、観客を呼ぶような活劇をしている訳ではない。
その辺りを分かっていないのか、それとも無下に扱われる事くらい承知の上なのか。いつまで経ってもこの人だかりが消える事はなく、それならば出来るだけ早く消えようとするのが常。

そんな中、
「応援ありがとっ、今日も行ってくるぜ!」
とザックスの声が響いて俺とアンジールのは顔を見合わせ肩をすくめた。
ソルジャー2ndとして採用されてからも変わらず自分らしさを貫くザックスというこの男、実は大物なのかもしれない。……いや、そんな訳はないか。
「じゃあな」
アンジールに手を振ると、それだけで集まった女達から嬌声が上がった。
ところで、そう言えば今日は早めに任務を上がるよう言われていたような……。
アンジールもちょうどそれを思い出したのか歩みかけた足を止めた。

「セフィロス、今晩7時、忘れるなよ」
「もし……忘れたと言ったら?」
「社長がカンカンだ」
にっと歯を見せながらおどけて言う姿に苦笑いを浮かべると、早足でその場を駆け抜ける。吹きすさぶ風と共に煌めく銀色の髪が揺れ光る姿にまた視線が集まるものの、そこから一歩踏み出す事は許されないであろう高貴で絶対的な後ろ姿。セフィロスのその背中に女達のため息の音だけが響いた。

二章以降はサイトでの公開になります。
二章 13/08/06 18:50

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